鳴石
蓼科山のすそ野に鏡餅状に重なった二個の巨石がある。これが鳴石(鏡石とも呼ばれている)である。昔、風が強く吹けば鳴ったため、このように呼ばれ、この石が鳴るときは、必ず天気が悪くなるといわれている。ある時、石工がこの石を割ろうとして金づちで二つ三つ叩くと山鳴りがして地震が起き、たちまち火の雨が降り、石工はもだえ苦しんで死んでしまった。この事があってから、強く叩くことはいけないとされている。柔らかく叩くと鈴のような音がする。
鳴石は大和の王権による東国の制覇が一段落し、大和と東国の交流、東西の交易が盛んになった六~七世紀頃に蓼科の神を祀る祭祀の場として古東山道の交通の要衝、峠道の難所に築かれたものと考えられる。
鳴石の巨石は蓼科山の溶岩が、泥流によって移動してきたときに磨耗して、丸味のある滑らかな石になったものと考えられ、同じ自然石が二つに割れたものとは考えられない。また上下いずれかの巨石が現在の場所にあったとすれば、当然近くに割れた他の巨石がなければならないが、付近にその痕跡がなく、これほど大きな巨石も見当たらない。そこで、蓼科山の北麓を調査したところ、わみ沢付近の斜面で、鳴石と同じように上下に割れた安山岩の巨石を数個みつけることができた。また、この鳴石の据え方を詳細に検討してもこの二つの巨石は別の場所から運んできて据えられたものと考えられる。
蓼科山麓の草原に巨石を運んで磐石を築いた労力はたいへんなものであり、古代の人びとの逞しいエネルギーと、蓼科神に対する信仰を知ることができる。
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更新日:2023年03月31日